労働基準法89条では、「常時10人以上の労働者」を使用する使用者は、就業規則を作成して労働基準監督署に届けなければならないと定めています。
そのため、パート・アルバイトなど雇用形態の違いに関わらず、常時10人以上の労働者を使用している場合は就業規則を作成・提出しなければなりませんが、作成の際に知って頂きたい点がいくつかございます。
必要事項について知る
就業規則には必要事項があり、これは「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」に分けることができます。絶対的必要記載事項とは、必ず記載しなければならない事項のことで、主に始業・終業の時刻や休憩時間、休日・休暇、賃金、昇給などが挙げられます。絶対的に必要な記載事項のため、どれかひとつでも就業規則に定めなかった場合、労働基準監督署に受理されません。
相対的必要記載事項とは、必ずしもこれを記載する必要はありませんが、労働基準法で相対的記載事項とされている事項について何らかの定めをする場合は、就業規則に記載をしなければなりません。例えば、「退職金」の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲や計算・支払い方法・退職手当ての支払い時期などを就業規則に定めなければなりません。
労働関連法以外の法律も必須
就業規則は労働基準法によって提出が義務付けられていますが、就業規則は労働関連法に対する理解があるだけで作成できるものではありません。就業規則を作成するためには、労働関連法のほかに私法の一般法である民法や所得税法などの様々な法律の知識が必要となります。例えば、「休業中の賃金請求権」については、労働基準法と民法の理解が必要となります。以下にて、その概要を簡単にご説明いたします。
就業規則と労働基準法26条および民法536条2項
まず、労働基準法26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業期間中、使用者は労働者に平均賃金の60%以上の休業手当てを支払わなければならないと定めています。一方、民法536条2項においては、債権者(使用者)の責に帰すべき事由によって債務者(労働者)の債務が履行不能になった場合、債務者は反対給付の請求権を失わないと規定しています。つまり、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、労働基準法26条では60%の手当てで事足りるとされる反面、民法536条2項では、100%の賃金の支払いをしなければならないとされているのです。
では、就業規則の作成ではどのようにすれば良いのでしょうか?
ポイントは、民法536条2項の規定は任意規定であり、労働基準法26条は、強行規定であるという点です。つまり、民法536条2項の規定は、就業規則や労働契約によって別途の定めをすることで適用を排除することができますが、労働基準法26条は、強行規定ですのでこれに反する定めは無効となり許されないということです。
もし、民法536条2項の適用を欲しないのであれば、その旨を明確に定める必要があるでしょう。また、当然ですが、休業手当ては平均賃金の60%以上に定めなくてはなりません。
就業規則の作成は思いのほか時間を要します。就業規則の作成・届出を速やかに終えるためにも、是非専門家である社労士への業務委託をご検討下さい。兵庫県神戸市にあるセンチュリー行政書士・社労士事務所では、就業規則の作成・届出の手続き代行を承っております。就業規則の作成を専門家へ依頼したい、自社の就業規則を見直したいという方は、お気軽にご依頼下さい。